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福岡家庭裁判所小倉支部 昭和63年(家イ)623号 審判

申立人 川島和子

相手方 川島憲二

主文

1  申立人と相手方を離婚する。

2  当事者間の未成年の子長男宏和(昭和52年6月15日生)の親権者を申立人と定める。

3  相手方は、申立人に対し長男宏和の養育料として昭和63年10月から同人が満20歳に達する月まで毎月末日限り金10万円を支払え。

理由

1  申立人は、主文1、2項と同旨及び義育料については「相当額を支払え。」との調停を求めた。

2  本件につき、調停委員会による調停を試みたところ、申立人代理人と相手方との間に第2回調停期日において主文と同旨の合意が成立したが、申立人本人は、現在病気入院中であるため、本件調停期日に出頭できず、その病状に照らし将来にわたっても出頭は不可能であること、他方、相手方は、仕事の都合を理由に第1回調停期日に出頭せず、第2回調停期日には出頭して申立人代理人との間に上記合意をしたが、将来の調停期日の出頭は危ぶまれ、まして申立人の入院先(千葉)に赴いて調停を成立させることは困難であること等の事情にあり、当事者双方本人が本件調停期日に出頭して離婚について合意を成立させる見込みがなく、調停は不成立とせざるを得なくなった。

3  本件記録、申立人代理人及び相手方の各審問の結果によれば、申立人と相手方とは昭和46年6月7日婚姻し、長男宏和が出生したが、相手方は、その後松本久美子と同棲し、同女との間に昭和52年1月15日政治、昭和54年5月9日憲治が出生し(いずれも認知し、父の氏を称している。)、以来現在まで申立人と別居を続けていること、申立人は、現在長男宏和及び実母山本久代らと相手方の実母所有名義の建物に居住しているが(昭和63年6月16日から病気入院中)、相手方が昭和61年7月を最後に申立人妻子への生活費の仕送りをせず、かつ居住している土地建物の売却を申し入れてきたため、もはや相手方との離婚も已むを得ないと決意し、本件調停を申し立てたことが明らかである。

4  以上によれば、申立人と相手方との婚姻関係は、相手方に不貞行為があること及び既に婚姻関係は破綻し、婚姻を継続し難い重大な事由があることは明らかであるが、離婚というような身分行為については任意代理は許されず、前記2のような事情で当事者本人が調停期日に出頭して合意をすることができない以上、代理人との間に合意が成立しても、調停は不成立とせざるを得ない。しかし、当事者双方のために衡平に考慮し、上記事情その他一切の事情を考慮すると、申立人の申立の趣旨に即し、かつ申立人代理人と相手方との合意にも合致するので、申立人と相手方とを離婚し、未成年の子である長男宏和の親権者を現在監護養育している申立人と定め、相手方から申立人に対し養育料として審判のときから毎月10万円を支払わせる旨、職権をもって審判するのを相当と判断する。

5  よって、当裁判所は、当調停委員会を組織する家事調停委員茶島純一及び同鷹嶋勝子の各意見を聴き、家事審判法24条により調停に代る審判をすることとし、主文のとおり審判する。

(家事審判官 大石一宣)

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